地下鉄 東京メトロと都営 統合に向け動くもハードル高く
(2010年8月21日 毎日新聞)
輸送人員世界一を誇る東京の地下鉄。その担い手の東京メトロと都営地下鉄が今月3日、初めて経営統合に向けた話し合いのテーブルに着いた。共にメトロの大株主の国と都の見解の相違は大きく、統合のハードルは高い。
先月末、日本橋駅と浅草駅でメトロと都営の連絡通路を隔てるシャッターの開扉時刻が15分繰り上がり、午前5時になった。これまではメトロ側がシャッターを開けておらず、始発電車の乗り継ぎができなかった。「都営とメトロに分かれていることの不便さを解消することが利用者のためになる」。6月の株主総会で都が改善を要求。国に協議を迫る材料になった。
都が示す「非効率な運営」の例はまだある。千代田区の九段下駅。一つのホームの両側にメトロの半蔵門線と都営新宿線が停車するのに、厚さ約50センチの壁が中央を隔て、乗り換え客は階段を上り下りしなければならない。
料金体系も違う。初乗り160円のメトロに対し、都営は170円。距離ごとの運賃も経営状態の良いメトロが割安だ。両地下鉄の乗り継ぎの際には70円引きだが、新たに運賃がかかり、いちいち改札を通らなければならない。
◇「二つの地下鉄」がなぜ生まれたのか。
メトロの前身の「帝都高速度交通営団」(営団)は、戦時体制の1941年、「空襲下で唯一の交通機関として、地下鉄は必要不可欠」との国策から誕生した。それまで個別に営業していた民間事業者や東京市の事業を統合し、国も出資した。
しかし戦後、東京への一極集中が加速。営団の路線拡張が追いつかず、都が60年に独自に都営地下鉄を開業した。採算性に優れた路線を有するメトロに対し、都営は建設費の高い時期に立地条件の劣る路線を受け持ち、赤字に苦しんできた。都営は06年度から単年度黒字を続ける。だが、09年度決算で累積欠損金が4300億円、長期債務も1.1兆円に達している。統合の最大の障害だ。
04年に特殊法人から株式会社化したメトロの株式の保有比率は国が53.4%、都が46.6%。東京地下鉄株式会社法はメトロの完全民営化のため、国と都が持つ株の早期売却を定めている。国はその方針だが、都は「株が売却されると、統合は困難になる」とみて、経営計画などに時期を盛り込むことにも待ったをかけている。
猪瀬直樹副知事は「メトロは公共的な存在。都営と一緒になっての新しい民営化がありえる。今なら都営も黒字化し、『結婚』する条件がそろっている」と強調。
一方、3000億〜4000億円ともいわれるメトロ株の上場益を国債償還にあてたい国は慎重だ。国土交通省幹部は「メトロ株は国民の財産。価値が棄損するような形で合併できるわけがない」と突き放す。3日の会見で、前原誠司国交相は「(都は)求めるだけでなくて、自らの経営をしっかり行っていただきたい」と、都営の経営状態の改善が先決との考えを示した。
非公開で行われた初協議。出席者によると、国と都がそれぞれの立場を主張したが、隔たりは依然大きかったという。次回は9月に開かれる。
◇東京の地下鉄の概要◇
(09年度) 東京メトロ 都営地下鉄
開業年 1941年 1960年
路線数と駅 9路線179駅 4路線106駅
営業キロ数 195キロ 109キロ
輸送人員 633万人 233万人
(1日平均)
経常利益 635億円 122億円
(単体ベース)
※東京メトロは帝都高速度交通営団として発足
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posted by train news at 16:59
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