(2007年10月26日 産経新聞)
羽田−成田間がわずか30分!? 高速リニアモーターカーで、羽田−成田両空港を結ぶ壮大な構想を神奈川県の松沢成文知事が提唱している。成田空港へのアクセスには、道路と鉄道両面の整備が急ピッチで進められているが、それでも1時間かかることが予想される。都心をリニアが疾走。そんな近未来の光景を目の当たりにする日は、来るのか…。
「羽田と成田の一体性を高め、国際線と国内線の機能を持つ国際水準の首都空港を目指す」。松沢知事がリニア導入を提唱するのは、このためだ。
「国際競争に勝ち抜くため、両空港をできるだけ短時間で結ぶことが必要不可欠」という。
松沢知事が月刊誌「Voice10月号」(PHP研究所)に発表した「羽田・成田リニア新線構想」は、社団法人「日本プロジェクト産業協議会」の調査(平成2年)を下敷きにしている。
具体的には、大深度の地下に最高時速300キロのリニアモーターカーを走らせる。現在、直通バスで約75分、電車ではスムーズにいって約100分かかる両空港間のアクセスが、リニアなら約27分と大幅に短縮される。
ルートは、横浜から東京都内や千葉を経て成田空港に至るもので、新宿やさいたま新都心までの支線も整備し、利用客の増加を図るという。
建設費用は当時の試算で1兆数千億円とされるが、「国や自治体のほか民間資本もあわせて解決は可能」としている。
リニア導入による環境への効果も見込んでいる。乗客1人を1キロ運ぶ際の二酸化炭素(CO2)排出量は、リニアが自動車の3割ほどであるため、「首都圏の人の移動や物流が自動車からシフトし、CO2削減と渋滞緩和につながる」。
松沢知事は、再選した今春の神奈川県知事選の公約にこの構想を掲げた。選挙期間中には、首都圏での連携を進めるため、東京都の石原慎太郎知事らと都内で行った街頭演説でも、この構想を披露したほどだ。
松沢知事は「今後、民間のアイデアも募りながら、首都圏の最重要課題として調査研究を進め、国との協議にもつなげたい」という。
一方、千葉県は都心と成田空港を結ぶアクセス整備を急ピッチで進めている。
その目玉が、都心と成田を結ぶ成田新高速鉄道。京成線や北総線などを経由し、約36分で都心と空港を結ぶ同線は、平成22年4月の開業が予定されている。
首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の県内区間は、今年3月に一部が開通。開通すれば、千葉県木更津市から成田空港まで房総半島を縦断する形になるが、整備が終わるのは当分先だ。
そんな高速鉄道も圏央道も、羽田−成田間となると、所要時間は1時間強と予想される。
それでも、千葉県の堂本暁子知事は「夢物語としてのリニアモーターカーもいいのでは」とした上で、「現実的なのは、圏央道。アメリカやイギリスの国際空港もそのぐらいで、首都圏の空港の機能としてはいいのではないか」と圏央道整備の重要性を語る。
堂本知事は「圏央道をどんどん進めようという目の前の政策と、リニアのような先を見据えた政策は競合しない」とも。
神奈川県では、今年度から22年度までの総合計画「神奈川力構想」に、このリニア構想を盛り込んだ。
今年度中は主に構想の検討に当て、22年度には首都圏の8都県市での共同取り組みを推進する方針。県京浜臨海部活性推進課では、今春から有識者などを講師に招いての勉強会も開いており、来年度には調査を始めたい考えだ。
同課は「技術的にはすぐ取り組めるという話ではないが、段階的に進めていきたい」としている。
鉄道ブログランキングへの応援 お願いします!
