長野以北開業への道筋(3)=不採算の枝線 「存続は」不安抱く地元
(2007/10/30 信濃毎日新聞)
「北陸本線と一緒に、大糸線もJRから経営分離される可能性がある。両方の鉄路をしっかり存続させて、七年後の新幹線開業を喜んで迎えたい」。十月七日、新潟県糸魚川市のJR糸魚川駅前にある集会施設。「大糸線・北陸線を守る会」の学習会が開かれ、丸山明三会長(76)が約七十人の市民らに訴えた。
二〇一四年度に北陸新幹線長野―金沢間が開業すると、このうち上越(仮称、新潟県上越市)―金沢間の並行在来線に位置付けられている北陸本線直江津―金沢間は、JR西日本から経営分離される。新潟、富山、石川の沿線各県が経営の受け皿について協議中だ。
一方、大糸線の経営は現在、糸魚川―南小谷(北安曇郡小谷村)がJR西日本で、南小谷―松本はJR東日本。「JR西日本は、北陸本線を手放す一方、その枝線に当たり、しかも赤字ローカル線の大糸線だけを維持するだろうか」―。そう心配する糸魚川市内の商店主や会社員、労組関係者らが七月、「守る会」を結成。将来も確実に存続するようにと、活動を始めている。
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北陸本線直江津―金沢間には、大糸線をはじめJR西日本が経営する「枝線(支線)」が氷見(ひみ)線=富山県、七尾線=石川県=など五線ある。
いずれも「不採算の路線」と同社広報部。沿線各県は「並行在来線ではないので、JR西日本が責任を持って存続させるはず」(新潟県交通政策課)とするものの、同社は「存続」を明言していない。山崎正夫社長は二十四日、大阪市の本社で行った定例記者会見で「今後の枝線のあり方について、個別に地元自治体と相談したい」と述べるにとどまった。
同じく赤字のJR飯山線も、地元利用客が存続に不安を抱く。平日の昼間、下水内郡栄村の森宮野原駅。飯山市内の病院へ通うため列車を待っていた村内の主婦(69)は「飯山線はバスやタクシーより安くて便利。新幹線が開業しても変わらず残ってほしい」と話した。
JR東日本は一九九六年、北陸新幹線長野―上越間の並行在来線として、飯山線ではなく、信越線長野―直江津間を選択した。だが、新幹線の長野―飯山間と飯山線は地理的にほぼ並行して走るため、新幹線が開業すれば飯山線の乗客が減るのは確実。飯山市は「運行本数が減って客離れが進むことも予想される。その前に利用促進策を考えたい」(総務部)とする。
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大糸線は今年、全通五十周年を迎えた。糸魚川市民有志は、廃盤になっていた歌謡曲「大糸線」をCD化し、十月中旬に発売。同月七日に大町市の大町駅前本通り商店街で開かれたイベントに招かれ、歌を披露した。
同商店街振興組合の吉沢俊郎理事長(71)は「大町は大糸線とともに発展してきた。これからは存続に向けて行動を起こさなければいけない」。大町市観光課は「新幹線開通が日本海側と大町・北安曇地域を行き来する新たな観光客の流れを生む可能性もある」とし、大糸線が存続すれば復活もある―と期待する。
「本線も枝線も、つながっていてこそ鉄道は生きる。住民、企業、行政、議会が一体になった取り組みが必要だ」。糸魚川市で開いた「守る会」の学習会で、講師の元鉄道会社運転士、酒井久雄さん(66)=富山市=は力を込めた。
[長野以北の並行在来線決定の経緯]
北陸新幹線長野以北の並行在来線をめぐり1996年、長野県の吉村午良知事(当時)は「信越線、飯山線のどちらかが該当し、経営分離される見通しだ」と発言。JR東日本との協議で同年、信越線長野―直江津間の分離が決まった。並行在来線について明確な定義はないが、旧運輸省(国土交通省)の96年見解では「新幹線の開業により、特急などの優等列車が新幹線に移る線」。当時、特急は信越線長野以北にあり、飯山線にはなかった。上水内郡信濃町や新潟県妙高高原町(現妙高市)など信越線沿線市町村は経営分離に反対したが、最終的に同意。両県は98年1月、「分離後は、県が責任を持って存続を図る」と運輸省に回答している。
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posted by train news at 17:35
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