新幹線長崎ルートと在来線共存、JR九州に重い課題
(2007年12月18日 読売新聞)
九州新幹線長崎(西九州)ルートの並行在来線(長崎線の肥前山口〜諫早)をJR九州が全線運行することで、長崎、佐賀両県とJR九州が合意した。同社の石原進社長は17日夜、福岡市内の本社で記者会見し、「ギリギリの選択だった」と厳しい表情で述べた。長崎ルート開通後の在来線の乗客見通しには不透明な要素もあり、新幹線との共存という重い課題を背負うことになる。
在来線の運行収支が年間1億7000万円の赤字との試算に基づき、JR九州の負担は1億円とされている。しかし、赤字が膨らめば、JRの負担は増えることになる。
2004年に鹿児島ルートが部分開通(新八代〜鹿児島中央)した際に経営分離して発足した第3セクターの肥薩おれんじ鉄道(八代〜川内)は、スタートからつまずいた。9年間は黒字の見通しだったが、利用が想定を大きく下回り、2年目にして赤字に転落、ローカル線の経営の厳しさが浮き彫りになった。
今回の合意では、赤字が増えても20年間の運行維持が義務づけられるうえ、収支の試算では人口減少の影響を想定していない。石原社長は「赤字が増えないように経営努力をする。自分たちの責任で運行する」と強調する。
鹿児島ルートが初年度に、開業前の在来線特急の2・3倍の乗客数を記録し、営業収益の増加に貢献したように、「長崎ルートの開業が、関連事業を含めて全体の活性化につながる」との思惑があるからだ。
新幹線で収益を確保しつつ、ローカル線の赤字は最小限に抑える――。JR九州は難しいかじ取りを迫られる。
新幹線長崎ルート合意に反対派首長ら困惑
(2007年12月18日 読売新聞)
九州新幹線長崎(西九州)ルートの着工に向けて、「並行在来線の経営分離なし」で佐賀、長崎両県とJR九州の3者が合意したことを発表した17日、経営分離と新幹線着工に一貫して反対してきたJR長崎線沿線自治体の首長は「思いもよらなかった発想」と困惑の表情をあらわにした。
これまで反対の旗を振り続けてきた佐賀県鹿島市の桑原允彦市長。反対の立場で共同歩調を取ってきた江北町の田中源一町長とともに、鹿島市役所で、佐賀県の坂井浩毅副知事を待った。午後6時、坂井副知事は両市町長に3者合意の内容を伝えた。会談は約45分、非公開で行われた。
「特急の本数がこれまで示された案と変わらないなど、現行よりも列車の本数が減る。とうてい納得できない」。会談後、桑原市長はこう異を唱えたが、これまでの威勢の良い批判の口調は影を潜め、疲れた表情を隠さなかった。そして、「(政府・与党は)着工を認める可能性が高い」と力無くつぶやいた。
◆話し合い終わり…佐賀知事強調
「長年の悲願の着工へ向け、一歩、二歩前進した。大変喜んでいる」。金子原二郎・長崎県知事は3者合意に笑顔を見せた。「3年連続で予算が付きながら着工できず、関係者が『今回のチャンスを逃したら次はないのでは』という危機意識を共有したことが、合意につながった」と説明した。
古川康・佐賀県知事は17日夜、同県庁で記者会見に臨み、一言一言に普段以上の力を込めて話した。
「反対自治体外しではないか」との記者の質問にも、「同じ考えを持つ人が集まらないと短時間でまとまらない。第3セクターでは鉄路がなくなると言われたので、JRの運行とした。プロセスがおかしいとは思わない」と強調。「大きく険しかった山を一生懸命登ることができた」と、安堵(あんど)の表情を見せた。
さらに、「政府・与党に3者の合意を伝えた時点で、反対する沿線自治体からの同意取り付けは必要なくなった。合意前の案に戻ることはない」とキッパリと言い切り、反対市町との話し合いは終わった、との認識を示した。
一方、石原進・JR九州社長は福岡市の本社での記者会見で、「(新規着工決定から)3年たっても話がつかないのなら、世の中も『何をやっているんだ』と思うはず。やれるだけのことはやったという気持ち」と感想を語った。鹿島市や江北町の反対について、石原社長は「(反対の)両自治体がこれまで主張したことと変わらない」と述べ、並行在来線問題をクリアしたとの自信を示した。
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posted by train news at 12:42
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