地下鉄新線「副都心線」
(2008/3/22 FujiSankei Business i.)
■山手線の混雑緩和期待/百貨店“戦争”にも波及
東京メトロが建設中の地下鉄新線「副都心線」池袋−渋谷間が、6月14日の開業まであと3カ月を切りました。その名の通り池袋、新宿、渋谷の3つの副都心をダイレクトに結ぶ路線ですが、開業後は「東京の人の流れが一変する」ともいわれています。
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副都心線は埼玉県和光市と東京・渋谷を結ぶ総延長20・2キロ、全16駅の路線です。今回は池袋−渋谷間の新規延伸区間が開業します。同区間を各駅停車で約16分、急行で約11分で運転し、並走するJR山手線や埼京線の混雑緩和などが期待されています。
開業と同時に和光市駅で東武東上線に、小竹向原駅で西武有楽町線に乗り入れるほか、2012年に渋谷駅から東急東横線と相互直通運転も始めます。和光市−池袋間は東京メトロ有楽町線との共用区間で、そのうち千川駅と要町駅には副都心線専用ホームが設置され、現在の新線池袋駅は池袋駅に改称されます。
そもそも東京メトロの各線は、初期に建設された銀座線と丸ノ内線を除き、すべて私鉄やJRとの相互乗り入れが実施され、近郊の私鉄・JR利用客が都心まで乗り換えなしで直通できるように建設されています。
首都圏の方なら当たり前かもしれませんが、たとえば大阪圏では訳が違います。近郊路線からJR環状線の内側(山手線の内側と同じ)にある都心の地下鉄を利用する場合、一部を除いて相互直通運転は実施されておらず、接続駅で面倒な乗り換えを強いられます。
その違いは経営主体にあります。“市営”地下鉄の大阪に対し、04年4月の民営化で発足した東京メトロの前身は、国や東京都が共同出資した営団地下鉄でした。
営団が近郊の路線同士を結んで広域的な交通ネットワークの一翼を担ってきたのに対し、“市営”市民の税金を使う“市営”である以上は「私鉄やJRとの間に一線を引き、市内の交通網さえカバーすればいい」という理屈が成り立ってきたわけです。かつて大阪では「お互い深く干渉しない」という米国の外交政策に引っかけて“市営モンロー主義”とも呼ばれていました。
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ところで副都心線は東急東横線への直通運転が実現すると、埼玉県南西部から池袋、新宿、渋谷を経て横浜方面を結ぶ1本の大動脈が完成します。ですから「人の流れが一変する」といわれているのです。
これだけではありません。3つの副都心はそれぞれ魅力を高めなければ、乗客がほかの街に逃げて素通りしてしまう恐れも出てきます。
そこで色めき立ったのが百貨店業界です。池袋、新宿、渋谷の各店では相次ぎ改装に乗り出し、地下鉄開業を前に早くも各店の“副都心戦争”が勃発(ぼっぱつ)しています。
副都心線は「東京で最後の地下鉄新線」ともいわれています。この先、東横線への直通化工事を除けば、今のところ東京メトロ、都営地下鉄ともに新線建設の計画がないからです。
とくに東京メトロは株式上場を目指しており、新線建設の巨額な負債をこれ以上避けたいとの見方もできます。
一方、都営地下鉄は輸送需要が比較的落ちる後発路線が多く、東京メトロと違って経営的に苦しいという事情も抱えています。
新線建設がひと段落した時点で両者が一本化すれば利用者も便利との声は根強いのですが、経営格差がネックとなって実現への道も険しいようです。
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posted by train news at 15:27
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