(2008年3月24日 読売新聞)
地下鉄駅の冷暖房や列車の発着などで生じる熱を自然換気で排出したり、再利用するなど、省エネルギーに配慮した新しい取り組みが広がり始めている。
◆冷水循環、夏も大幅節約
東京・渋谷の新地下鉄駅工事現場。地上から広く掘り抜き、地下1階のコンコースまで明るい日差しが射し込んでいる。コンコースの脇には、長軸が22メートルの巨大な長円形の穴。縁からのぞくと、地下3階で建設中のホームと線路が見えた。
埼玉県和光市から池袋、新宿を経由して渋谷へ至る地下鉄東京メトロ副都心線(総延長20・2キロ・メートル)が今年6月14日開業するのに合わせ、「新渋谷駅」の利用も始まる。2012年度から東急東横線と相互直通となるため、同線の渋谷―代官山駅間を地下鉄化して新駅をつくっている。
新駅のポイントのひとつが、周辺地区の再開発に合わせて採用した環境に配慮した設計だ。
地上から地下約25メートルのホームまで吹き抜け構造にして、「自然な空気の流れ」を空調の基本とする。電車などの排熱によって暖かくなった空気を吹き抜け空間を通じて上昇させるとともに、冷たい外気を取り込んで空気を対流させ、外気との温度差を抑える仕組みだ。
「自然換気」の課題は、夏、外気温も高くなった時の冷房。新渋谷駅では、ホームの床や天井などに管を配し、冷水を循環させる放射冷房システムを利用する。従来の地下鉄駅の空調は、熱い空気をダクトを通じて強制的に排出していた。新システムは空調排熱用の電力を必要としないので、エネルギーの大幅な節約につながる。
東急電鉄鉄道事業本部工務部の森正宏さんは「自然換気と放射冷房の導入などで、二酸化炭素の削減量は年間1000トン、電力を年間10万キロ・ワット時節約できると試算しています」と話す。
このほか、副都心線の一部区間(渋谷―明治神宮前)で、円をつぶしたような形のトンネルを掘る工法を新たに採用した。円形のトンネルと比べ、土の掘削量を約1割削減できる。これも、環境負荷の軽減を目指して進めている試みのひとつだ。
◆熱回収、暖房源に
地下鉄駅のホームやコンコースの空調を工夫しているのは、渋谷駅だけではない。
神戸市営地下鉄では、7駅で、〈1〉夜間の電力で作った氷を朝のラッシュ時や電力利用がピークを迎える昼間に解かして冷房〈2〉駅周辺の外気温を常時測定して、外気とコンコース、ホームとの温度差を一定に保つ〈3〉電車のホームへの入線で生じる風を利用した換気――などの対策を講じている。
その結果、「海岸線新長田駅では、年間でエネルギー消費を約20%近く減らすことができた」(同市交通局施設管理課)という。
環境省が実施した地下街の人工排熱の実態調査によると、東京都23区内で生じる地下街の総排熱量は1日1・5テラ・ジュール(約1万2100世帯分のエネルギー消費量に相当)と推計されている。新たな路線、地下街の開発が進めば、さらに排熱が増えると見込まれる。
地下で生じた熱を、ただ大気中に捨てるだけではもったいない。
東京副都心の新宿南口西地区に冷暖房を供給している新宿南エネルギーサービス(東京都渋谷区)では、都営地下鉄大江戸線新宿駅で、ホームの電車や人体から排出される熱を回収し、約50度の温水にして暖房の熱源に利用している。同社の中島克彦営業技術部長によると、供給先のビルでは暖房エネルギーの50〜60%を賄っているという。
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